夜歩く
夜の散歩が大好きだ。
寂れた港町に住んでいた青春時代は、夜の港を歩くのが好きだった。
港と言っても決して洒落たものではない。
ぶっきらぼうに並べられた小型漁船達や、もぬけの殻の倉庫や事務所。
日中はたくさんの人達が労働している、生活感あふれている場所の寝静まった姿をわざわざ見たいがために、ボディーガード役の飼い犬と共に毎晩毎晩歩いていた。
この傾向は20年ほど経った今も変わりない。
最近の散歩のお気に入りは、工業団地の周辺にある町工場が点在している場所である。
本来人が賑わう場所が、もぬけの殻となっているとう、なんとも言えない寂しさに情緒を感じるのだろうと、自分自身を分析している。
この感覚。中々、他人に説明しづらいし、話したところで共感してもらえるのかも謎だと思っている。
だけど、私は私自身のこの感覚、この価値観を愛しく思っていて、これからもずっとずっと、たとえ私を取り巻く環境が変化していったとしても、手離さずに大切に守っていたいのだ。